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第63回(2025)東京黒百合展相互講評

「小河内ダムから月夜見峠をながむ」油彩F20  石川三千雄
大胆な構図と彩色、一言でいうと潔い作品といった印象を受けました。単純化とパターンと固定概念というものがその人の個性の源泉だという人もいるようですが、まさにそういったところから生まれた作品ではないかと感じました。
  ― 青木康夫 ―

「旅の瀑布」 テンペラ/油彩混合 SH     采 孟
小さなサムホール(22.7×15.8cm)の絵は、あまりに小さくて何が描かれているのかとついのぞき込んで驚いた。描かれていたものは、なんと世界一の瀑布イグアスの滝とのこと、真っ白な飛沫を上げる雄大な瀑布、大地の裂け目の長大な崖、名もしれぬ多様な植物の生い茂る熱帯雨林、そして澄んだ水を悠々と流すイグアス川。これらの風景が小さな画面の中に、神秘的な色彩で精緻を極めて描きこまれていた。まさに脱帽であった。     

  ― 阿部保彦 ―

「朗読会」水彩 F20        江澤昌江
 江澤さんの出品された3点の作品のうち、「物語Ⅰ」「物語Ⅱ」の版画は内容的に現代人が読むことが難しく、対象外とした。F20の水彩画「朗読会」のバラの花の仕上がりは花の影などをたくみに仕上げている。この展示されている場所1ヶ所が非常に引きたたれていると思われた。
      ― 石川三千雄 ―

「西伊豆堂ヶ島海岸」油彩 F20   大谷芳久
 13年前の風景とはいえ、時空を超えて穏やかな陽射しが絵いっぱいに拡がり、心が和む作品です。            
  ―  采 孟 ―

「粉雪舞う雷門」油彩 F20、「雨に濡れる雷門」油彩 F15      奥野嘉男    
 奥野さんの絵のモチーフはオーソドックスな印象ですがいつ見てもマンネリ感がなくて凄いと思います。目にはっきり見える提灯や門、行き交う人々。見えるけれど表現が難しい雨や雪。その景色から感じるペーソス…せっかく訪れたのに悪天候という皆のがっかり感かも…。目に見えないものを絵に表現しようとするところがなにより素敵です。 

   ― 江澤昌江 ― 
            
「樹霊」墨彩 125×135cm     笠木玉泉
 大画面に墨で描いた心象風景。そのような構想で、またどのような技術でこの複雑な色彩と形と動きを描き出したのか圧倒されてしまいます。和紙と墨の特性を熟知した作者が水と筆などを自在に使いこなし、時には偶然性を利用または制御しながら心にかなう作品を創造している手腕はうらやましく思います。 

   ― 大谷芳久 ―

「桃源郷(新府)」油彩 F15    笠原寛
山があり、麓があり、手前に川や道がある風景は見るものに大きな安らぎを与える。ご本人も好きな写生地と言われるが、日本人であれば一度は訪れたいと思う風景であり、見事に描いておられる。暖色系の色合いで風景の遠近を表す巧みな表現は是非見習いたいと思っている。
   ― 奥野嘉男 ―

「広徳寺の銀杏」油彩 F20    鏑木照美
3日間銀杏の元に通われて最後の命の輝きをキャンバスに移し取られたのですね。黄色の命の炎が迫って来ました。
   ― 笠木玉泉 ―

「レクイエム」油彩A1       桑山雅子
主人公は亡くなられたのでしょうか。とてもきれいなブルーに魅了されました。素敵な絵に仕上がりました。蝶々に導かれ、後になり、先になりして安らかに天国に行かれたことと思います。

   ― 笠原寛 ―


「御陣乗太鼓」油彩 F20     小石浩治
昔、上杉勢が能登に攻め込んだ時、住民が能の面をつけ、太鼓をうちならして追い払っている様子が力強く描かれている作品で、現代も太鼓で地震や豪雨を追い払う事が出来ないものかとの思いで描いたそうです。 

   ― 鏑木照美 ―

「熟成タンク」デジタルアート 725×545cm P20相当  後藤一雄
 後藤さんの作品はデジタルの幾何的模様を独自の感性で作り上げておられるので解釈がとても難しい。いつも直線的でモノクロのイメージがあったが、今年は暖色系の色と曲線、地の色も白の割合が多く明るく穏やかな仕上がりに感じた。年齢の影響なのか、作った時の気持ちなのかは不明ですが女性的な優しさを感じた。

   ― 桑山雅子 ―

「香(こう)」日本画 725×500cm     嶋崎明代
 小品コーナー「受け取った言葉たち」は、鉛筆、ペン画で描いた日常目に触れる事物を丁寧にスケッチし、まとめて小テーブルに飾った。このたゆまぬスケッチ、下地の力があって、日本画「香」を描いたものだが、中央の梅は想いが強く,やや描きすぎの感があります。後景の色合いはとても穏やかで、眼に優しい。
   ― 小石浩治 ―


「谷川岳遠望2」油彩F20「姫川・白馬村」油彩F20  清水全生
清水さんの絵は、いつもですが、優しさと、のどかな雰囲気を醸し出している。 ①谷川岳は、近景・中景・遠景としっかりとした構図で残雪残る谷川岳が美しい。右中景の稜線を左のように輪郭をぼかせた方がいいかもしれないと思った。 ②流れる川と紅葉する風景は、牧歌的な美しさがある。そんな風景の中に、遠景のはっきりした構造物は、しっくりこない。ぼかしてみるか、無くしてみるか考えどころである。
   ― 後藤一雄 ― 
「セローム2013年」アクリルF10    西村幸二
 題名のセロームは、よく見たことのある観葉植物、あらためて調べました。西村さんの日々日常、大切にされていたセロームを処分された記憶、思い出でしょう。西村さんの独特の世界感に魅了されます。セロームを見ると、その頃の記憶がよみがえって来るような、時が流れている、大切な思い出、大切な記憶。

      ― 嶋崎明代 ―

「上毛高原」 油彩 P10       長谷川脩
 早春の谷川岳を奥に、上毛高原の山並みがきれいに描かれて全体的に美しい絵と思う。山並みの緑は種々な陰影が混り、点在する民家等も繊細なタッチで早春の雰囲気が良く出ている。手前の棚田、木(桐の木と思う)の配置も良く、絵全体の拡がりを出している。奥の谷川岳は雪が残り、美しい色であるが曇り空との対比で少し霞んで見える。もう少し強くてもと思うが…。
   ― 清水全生 ―

「吉野の桜」アクリルF15       長谷部司
【Google LensとAIによる概要<要約>】この画像は、秋の紅葉を抽象的に描いた油絵。暖色系の色が多用されています。筆のタッチがはっきりとしており、力強い印象を与えます。具体的な風景というよりは、紅葉の持つ色彩や雰囲気を表現しているように見えます。手前には木の幹が描かれており、奥行きを感じさせます …以上…
※白山桜は遠目にはピンク見えるそうで、茶が濃すぎたのかも。 

   ― 西村幸二 ―

「魚野川初夏」油彩F20        樋口正毅
一時心配された体調も回復され本来の作者の筆致が戻って来た。力強く感じる緑の色調が魚野川を中心に周りを染めている。場所は異なるが同じ魚野川に会のスケッチ旅行が企画されたことがあり、その時も地元の作者に大変お世話になった。懐かしく思い出されると共にこの清流が多くの人を引き付けている理由が分かる輝きである。       

   ― 長谷川脩 ―


「習作1」「習作2」水彩F8      福林紀之
驚いたのは、二点とも習作として出品されながら、構図、色彩、輪郭のすべてが、巧まずして余人には真似のできない独特の風格を備える作品になっていることであった。これからが楽しみです。出来映えは石膏像の方が良いと思いました。
   ― 長谷部司 ―

「柱状節理の海岸風景」油彩F20、「雨の林間風景」油彩F6       牧野尊敏
① 垂直に厳しく立ちはだかる岩と激しく押し寄せる波、タテとヨコの見事な構成に感銘を受けました。押しては返す波の音と水しぶきが飛んで来そう臨場感、みごとな描写力にいつも感動しております。
? 紅葉がとてもきれいな木立の中を気持ち良さそうに軽快に歩いている人物、雨にぬれた路面の見事な表現といつもの手慣れた林間の描写力に絵の力量のすごさを感じます。
   ― 細井真澄(樋口・代) ―

「危うい舵取り日本丸」油彩F20    細井真澄
初めて東京黒百合会に出展した時、細井さんが声を掛けてくれ、そして、これが私の絵だと説明してくれた時のことを思い出す。もう主題は忘れたが、鉄旅に心酔し北海道の様々な場所を歩いたことを重ねて、その時も明確な主張を表現されていた。今回の絵も米国、ロシア、日本の国旗を下敷きに日本丸の行く末を細井氏とおぼしき人物が見守っている。主張の明確さ、ゆるぎない信条の確固さは、これまでの絵の主張と少しも変わらず堅調に推移している印象である。
   ― 長谷川脩(福林・代) ―


「新緑の山居倉庫」アクリルF20、「妙義山の波雲」アクリルF15、「風光る利尻富士」アクリルF6  森典生  

① どっしりと構えた秋田の倉庫に歴史の重みと米倉庫に歴史の重みと時の流れが伝わってきます。人物の点景が木々と倉庫の大きさを感じさせ、スケール感のある絵に仕上がっています。
② 奇怪な山、妙義山、紅葉を感じさせるオレンジの色調と湧雲によって見事に表現した秀作です。
③ 早春のさわやかな季節の利尻富士、岩の間から気持ちの良い風が吹き抜けてきます。もっと大きくした絵を見てみたいと思いました。

   ― 細井真澄 ―

 


「陽だまり」油彩F30         渡辺理枝
渡辺さんの出品コメントに、陽だまりは高齢者施設を連想させているとある。3匹のねこが寄り添って陽だまりで佇んでいる構図は、猫を高齢者とみるのであろう。自然の緑の中の陽だまりで安心しきった姿が、安らぎの空間に佇む老人の姿を想起する。 渡辺さんの絵は、構図を単純化し動物を配置する独特の絵が多いが、この絵はよくまとまっていると思った。作者自身も高齢者、よくこのような発想展開ができるものだと感心した。欲を言えば陽だまりの空間部にもう少し構図の変化をもたせたら、陽だまり空間をより強調できたのではないかと思った。また私個人の感想ではあるが、安らぎの象徴として花等をもっと添えるとほのぼのとした癒しの空間になるような気がした。
   ― 牧野尊敏 ―


「無意根小屋・秋」、「無意根小屋・冬」水彩F4   青木康明
  作品「秋」は、作者が学生時代スキー部員の友人とかつて「冬季に備え、薪の補充・煙突や小屋の掃除を行なった思い出として」昨年に失った山小屋への思い悲しみがよく表現された作品と思われる。
山小屋の前の二人にその表情が表れている。作品「冬」は雪の山小屋にお世話になった思い出が寂しい小屋の顔、雪の筆さばきに克明に表現されている心のこもった作品である。
   ― 森典生 ―

 


「密やかな競演」、「ドルドニュ川(模写)」、「水辺の春」パステルF4    青木康明
① 絵は第一に構図だと思います。テーマの花々の競い合いだから、花々を左右に分けたのでしょうか。花々をコップの水よりも丁寧にバランス良くポイントも意識して描いたら絵がさらに生々したと思います。

② 川の流れの感じをよくつかんだ秀作だと思いました。

③春らしく明るくどことなく愁しさを感じました。

   ― 渡辺理枝 ― 

 

 
 

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