文化、芸術は不要不急か
笠原 寛
永い巣籠りになっております。 この様な時は、多くの絵が描けると思っておりましたが、全く筆が進みませんでした。それでも過去の作品の大小60枚の整理はしました。
昨年、今年とコロナ禍で、文化芸術関係に従事する者にとっては、受難の時代となりました。
東京黒百合会の皆様にお世話になっております銀座アート・ホールも開店休業が続いております。
経費だけが出て行きます。あの場所は家賃が高いので大変です。
文化芸術に親しむことが、人間であることの大きな証明の一つと日頃思っておりましたが、この時代、人の多く集まる事は最悪の事となりました。
数年前に、銀座アート・ホールが、閉店するらしいとの噂を聞き、前の経営者から経営権を譲り受けました。既に国分寺市で画廊 (司画廊) を経営しておりましたので、私が携わればどうにかなるかも知れないと言う、思い上がったひらめきがありました。
また、前から何回も利用してお世話になっていたことから、銀座からこの画廊を無くしてはいけないと強く思ったからでした。しかし経営は中々大変でした。
コロナ禍の始まる寸前には、努力が実を結び時には息継ぎが出来るかもとの希望を持てるまでになっておりました。
画廊のある通りはコリドー街です。 (※ 回廊という意味で、明治座会長が命名したそうです。)
綺麗なお姉さん達の多くいる大人の銀座 (通称ナカ) に対してこちらは若者が集まる飲食店の連なる今人気の通りです(通称 ナンパ通りとも)。
画廊の上は高速道路になっているのですが、堀を埋めて作った数キロメーターは、東京高速道路株式会社という民間会社が経営をしています。
この会社が工事費を調達して作りましたので、その代わりに道路下の店舗の経営権を取得したのです。
この高速道路は2040年には、車用ではなく遊歩道になることが決まっています。
※ コリド--=(英)廊下、通路、(仏)建物の各部をつなぐ回廊の意
※コリドー通り=昭和31年外濠を埋め立てて完成した高速道路下にある銀座コリドー街からとったもの。
コロナ禍になる前から絵を描く人の高齢化に伴い数々のグループ展が成り立たなくなり、加えて若い人が絵の世界に参入しなくなり、銀座では毎月のように店をたたむ画廊が増えていました。
そして今回の此の騒ぎです。また、しばらく水中に没します。息が続けばいいのですが。
国からの支援金も画廊にはありません。
どこの国でも文化芸術は主要な産業として認められています。そしてそれらは単なる娯楽ではなく、個人と社会が発展していく為に必要不可欠なものとみなされています。 日本はその点、全くの後進国です。
ここ数年文化事業に力を注いで参りました。
そのことで利益を上げようとは思っていません。
そうでなくてはならないと思っています。
しかし事業を永続させるためにはあまり多くの赤字を出すことも出来ません。この時代、二つの貸し画廊、四つの貸し劇場、四つの稽古場、四つのクラッシックバレエの貸しスタジオ、ライブハウスを経営しておりますが、いずれも多くの人が集まらないと成り立たないもので、国から目の敵にされているものばかりです。
国から援助があるのはライブハウスだけです。
理由は中で飲み物を売るので、飲食店扱いのためだそうです。
この時期にこの様な文化事業を経営する事は、経営的にはやめた方がいいと解ってはいるのですが、一生のうちには「クレージーだが、やらねばならないこともある」 と、腹を決めたところです。
照ノ富士関や池江選手の様に地獄を見てきた人達の努力にただ敬服するばかりです。
彼女曰く「つらくともしんどくても努力すれば必ず報われる」 が、この文化芸術の世界に起こることを願っています。どうぞご支援の程お願いします。
銀座アートホール
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