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  • 執筆者の写真東京黒百合会

私のモチーフ

 采 孟

 私のモチーフは旅の風景、それもとくに海外の風景です。私は仕事の関係で1977年以降これまでに50以上の国に出かけています。当初は米国、西欧、東南アジアが中心でしたが、2000年以降は中国、インド、ロシア、中東、東欧、アフリカ、南米が加わりました。パスポートのスタンプを数えてみると、この10年間だけでも61回出国していました。このように出張に明け暮れるなかで、出張先での時間の合間に趣味の写真を撮ろうと思い立ち、出張には必ずカメラを持参するようになりました。まだデジタルカメラはそれほど普及していませんでしたし、機能も今ほど充実していませんでした。たまには中判カメラを持ち出すときもありましたが、普段はレンズの明るい小型カメラに彩度の高いベルビアというポジフィルムを入れて、街角、家並み、市場、水辺、郊外の山野など感銘を受けた風景を撮りました。何しろフィルムの枚数に限りがありますから、取り敢えず撮っておこうという訳にはいきません。帰国後にフィルムをルーペで確認して選んだコマをプリントし、それをトリミングして校正・構成し写真集にまとめます。

Travel(旅行)とLogue(記録をつける)を合わせた言葉であるTravelogueというタイトルで毎年作成してきました。例えばTravelogue 2015といった具合です。最近ではデジタルカメラやスマホと写真アプリの飛躍的な発達で、カメラの手振れや残りのフィルム枚数を気にする必要もなければ、写真ラボに頼ることもなく写真集を作成することができるようになりましたが、全てのプロセスが手作りであった頃をとても懐かしく感じています。

さて、10年ほど前にちょっとしたご縁があってテンペラ画の仲間に入れていただきました。その結果Travelogueの中から気に入った写真を選んで下絵を作成しテンペラ画を描くという流れができました。自らが感銘を受けた風景ですから絵の題材としては申し分ないのですが、実際に絵を描くというのは難しく思うようにはいきません。しかし、最近では写真の細部や色彩に拘らず、むしろ自らの心象で描けば良いと思えるようになりました。もう一つの発見は、写真集はどちらかといえば過去から現在の時間を楽しんでいるのですが、テンペラ画はこれからの時間も楽しめます。写真の中にある思い出とともに、写真?テンペラ画という流れで繋がる時間は素晴らしいと感じています。


            『旅の海辺』


その昔ヴァスコ・ダ・ガマやフランシスコ・ザビエルが訪れたインド西海岸の古都ゴアの

海辺です。

アラビア海を照らす大きな夕日を背に波と戯れている人たちがとても印象的でした。


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