私のモチーフ(南国の果物)
樋口 正毅
「ホット、ホッター、ホッテスト」と3シーズンしか無いと揶揄される南国で20年余りを過ごした私にとって、南国の果物(tropical fruits)は忘れられない。食べるのに夢中で絵にするなど考えもしなかったが家内にせがまれてフイリッピン規格18X22のキャンバス(ほぼF10号)に描いたのが下の油彩画である。描いた果物はドリアン、パイナップル、マンゴスチン、ランブータン、スターフルーツ、ローズアップル(チョンブー)、パパイヤである。帰国後東京黒百合会の仲間に加えて頂き、神田で開催されていた合評会で皆さんから「ごちゃごちゃし過ぎ」と酷評されたのを覚えている。
《ドリアン》鋭く硬い棘に覆われた人頭大の極めて個性の強い果物だ。果肉は乳白色で「天
国の味に地獄の匂い」と言われるように初めて食べる時には、口に運ぶのに勇気がいる。その匂いたるや「臭い」。子供の頃のポットン便所の匂いと言うか硫黄化合物に腐った玉ねぎの匂いを混ぜ合わせた様な匂いで果肉が熟せば熟すほど臭みは強くなる。私たちが初めてドリアンを目にしたのは、クウェートから夏季休暇で日本に帰省途中、シンガポール観光した折路上でドリアンを売る売り子に促され恐る恐る口にしてみた。一口口にするやバターの様な果肉は舌の上で溶け、こってりとした濃厚で甘くクリーミーなカスタードの様な味わい、まさに「果物の王様」に値する味を満喫出来た。私も家内も夢中で頬張ったが子供たちは強烈な匂いに圧倒され口にすることは無かった。その後バンコック(タイ國)に 赴任中の3年間はシーズンになると近くの日曜市や屋台などで毎年3?4個のドリアンを購入し味わっていた。マニラ(フイリッピン)に赴任中の11年間はタイ、インドネシア、マレーシア、ミンダナオ島(フイリッピン)等に出張の
際にドリアンを口にすることができた。これらの生産国でも飛行機内やホテルの部屋への持ち込みは禁止されている。購入したドリアンをボーイにチップをはずんでプールサイドで殻を割り果肉にかぶりつく。ほっぺたが落ちそうだ。
日本に帰国後は全く食べる機会も無くなっていたが、2012年8月次男夫婦が孫を連れてお盆に帰省した折ベーシアで購入したドリアン1個(1,900円)を土産に持参した。早速軍手をはめ出刃包丁でドリアンを割って果肉を取り出す。一口食べてみる。忘れられないドリアンの味だ。家内と私は大喜びで食べたが、息子夫婦と孫はドリアン特有の匂いに辟易し一切口にしなかった。
その後は、たまに地元のスーパー(イオン六日町店)でドリアンを見つけると大喜びで迷わず買って家の池端で割って星空を眺めながら果肉を頬張る・・・実に美味い・・・至福の一時だ。
最後に食べたのは 2019年7月で1個4,000円で購入した。ところが今年6月見つけたのは1個8,618円と倍以上。家内は高すぎて要らないと言ったが、私は3歳児のようにどうしても食べたくて、買い物カートに入れてしまった(水彩1)。大きくて果肉も沢山あり数日至福の時を過ごす事が出来た。 「女房を質に入れてもドリアンを食べたい」と言うお国柄のタイ人に教わったのは、ドリアンを食べた後には水を大量に飲む事と食べすぎに注意、またアルコール類との食べ合わせは命を落とす恐れもあり絶対にNGとの事でした。
《マンゴスチン》 黒紫色で厚めの皮を割ると白いミカンの房状の果肉が並んでいる(水彩2)。甘酸っぱくて爽やかな上品な香りがして、さすが「果物の女王」と納得。ヘタの反対側に花びら様の模様があり房の数と一致する。皮を触って石のように硬いのは腐っていて食べられません。
《パパイヤ》 熟すると黄色い果実ができる。粒々の黒い種子が中央の中空部分
にたくさんある(水彩3)。種子は取り除いて、周りの果肉を食べるが甘くてメロンのようで美味。ビタミンAとCが豊富で、蛋白質分解酵素も含むので肉類を食べすぎた時など消化を助けてくれる。パパイヤは1年中手に入り種子の真っ白い未熟のものは青パパイヤと言って料理の食材としてサラダや和え物、炒め物などに使われる。
《マンゴー》 始めてマンゴーを食べたのはクウェートでだ。スーク(市場)で赤いリンゴに似た果物を見つけ聞いたところアップルマンゴーで美味しいよと言われ買って
食べてみた。すごく生臭くて、渋みもあり、甘みも全くなく食べられたもんじゃない。今思うと未熟マンゴーだったのだろうかだが。アップルマンゴーはその後も口にする気にはなれなかった タイでは暑さが強まる3月から6月頃までオグロン種がバンコックの路上の売り子でも屋台でも手軽に購入出来た。果皮は薄い黄色で熟すとレモン色になる。甘みが強く若干酸味もある爽やかな味で実に美味しく、さすが三大トロピカルフルーツの名に恥じないと感心する。 フイリッピンでは黄色くコロッとしたカラバオ種(水彩4)が味も香りも最高で値段を気にしなければシーズンの4月?7月以外でも1年中食べられた。帰国後はマニラの友人が毎年このマンゴーを送ってくれていたが、友人も帰国したので、今では国内の輸入業者からタイ産のナムドッグマイを毎年購入し濃厚な甘みを楽しんでいる。マンゴーはウルシ科です。触れてかぶれたり、食べてアレルギー症状を起こす人もいるそうです。
《ランブータン》 真っ赤で毛がモジャモジャ生えたゴルフボール大の果物 (水彩5)。
皮を剥くと白い半透明の果肉が現れ、中心に細長い種が1個入っていてその周りの実はぶどうに似た甘酸っぱくてジューシーでいくらでも食べられる。糖度は20度もあるそうです。
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