top of page
執筆者の写真東京黒百合会

私のモチーフ

福林紀之

 どんな時に絵を描くかと聞かれれば、ほとんどは旅先で少し寛いだときである。

 仲間たちとヨットで出かけた離島のさびれた港や、漁船の船だまりの風景にふれた時。雪を被った連山が見えた時などである。山登りの時は何時も仲間たちより遅れてしまう。水と絵具とスケッチブックの入ったリュクザックは、仲間たちのそれより僅かばかり重い。絵の道具はせいぜい2キロにも満たないが、それを遅れる理由にする。

 山頂に着くとF3のスケッチブックをまず広げる。それほど良い景色でなくても、わざわざ余計な物を背負って多少辛い思いをしてきたのだから、1枚くらい描いてやろうという気分になる。大きな山並みを描くときは スケッチブックを両翼に広げてはみ出して描く。片方は前ページの裏面であるからつるつるで、絵具の載りが悪い。そんなことはお構いなしだ。10分くらいそんなことをしているとお湯もわき、ラーメンと握り飯の昼飯になる。小生のスケッチスタイルはそんなものだから、山や海でのスケッチは10分か15分の殴り書きである。



 もう少しまともに画を描きたいと、NHKカルチャースクールの水彩画屋外教室に通うことにした。山内亮さんという先生はとてもよく教えてくれるのだが、2年ほど前から体を壊し、屋外スケッチから室内での静物や花の絵に変わってしまった。なんだか静物や花の絵は難しくて描いていてもちっとも興味がわかない。

ある時、この黒百合会のお仲間に入れて頂くことになった。入ってみて随分と場違いのことに気がついた。皆さんは大きな油絵を描いて展覧会をやっているではないか。こりゃ大変だ。それなら折角の機会だからと、油絵の具を買って、自己流に描いてみた。するとこれがとても面白い。大きい絵を描くのは楽しいなという気分になった。というわけで、今年も油絵のまねごとなどしよう。潮の香りがあふれるような海の絵、山の冷気が感じられるような雪山の絵が描けるようになりたいものだ。


閲覧数:21回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page