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  • 執筆者の写真東京黒百合会

私のモチーフ

 阿部保彦

 私は、2022年(令和4年)2月に、故会津光晨さんのお勧めで当会に入会し、その年の5月の小品展に初めてパステル画3点を展示させていただきました。その時、私の絵を見ながら会津さんは「阿部、お前は何のために絵を描いているんだ?」という思いがけない質問をされ、そんなことを考えたことのない私は、何も答えられませんでした。

 その後その質問に答えることが一つの宿題のようになり、心の中でときどき思い出しては考え続けてきました。しかし、なかなか答えは見つかりません。そこで答え探しの一助になるかと思い、最近描いた絵面をつらつら眺めることをしてみました。

 そしてあることに気づきました。風景画、静物画そして模写のいずれの場合も、構図に十文字が多いのです。風景画の場合、縦線は高い塔とか背の高い樹木、横線は地平線か遠い山並み(図1参照)。静物画の場合は、縦線は花瓶・背の高い茎、横線は机とか敷物のむこう側の縁(図2参照)。


図1


図2

 そして、縦の線は、天に向かっての何かの祈りの標章、横の線はいまだ行ったことのないはるかな国への旅の誘いを表している・・・?

 でもそうなのかな~。半信半疑のまま少し時間が過ぎました。そしてほんの2ヶ月ほど前のことです。クロード モネの「ヴェトウィユのながめ」(図3参照)を模写しながら、模写にこの絵なぜ選んだかを考えているとき、アッ、この絵は私が大学卒業まで過ごした札幌の北のはずれの景色に似通っている、私の心の原風景はこれなのかもしれない。手稲山脈のすそ野から石狩平野へと続く広々とした地平線、ところどころに牧草地や玉ねぎ畑を仕切るポプラや針葉樹の木立。私はこの原風景にあこがれてパステル画を描いていたのかもしれない。むつかしいイデオロギーや宗教的主張があって書いていたわけではなく、もっと単純に少年・青年時代を過ごした場所の、伸びやかな、そして時には厳しい表情を見せる景色に再び抱かれたいと願いながら描いていたのかもしれない・・・。


図3


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