―江の島と大波 ― 森典生
鎌倉の稲村ケ崎は由比ガ浜と七里ガ浜を分ける海に突き出た岬で、岬の上に立つと小動岬、江の島のほか富士山も望める。
四季を通じて魅力ある風景に巡り合えるので時々訪れることにしている。
少し風はあるが穏やかで大波が打ち寄せスケッチには最高のチャンスであった。
絵の主役は江の島にして目線の誘いとして大波を取り入れた。
砂浜をえぐり打ち寄せる白波はとても逞しく心がどよめいた。富士山もはっきり見えたが主役の江の島を引き立てためるために少しぼかして表現した。
稲村ケ崎という地名の由来は、岬を遠くから眺めるとこんもりと樹木が茂り稲わらを積んだ山のように見えるところから名付けられたと言われている。
「真白き富士の嶺 緑の江の島 仰ぎ見るも 今は涙 帰らぬ十二の 雄々しきみたまに 捧まつる 胸と心」 逗子開成中学ボート遭難慰霊碑が建っている。
すがりつく弟をかばう兄のブロンズ像で彫刻家菅沼五郎の作である。
新田義貞の「鎌倉攻め」の古戦場としてもよく知られており、義貞は岬を突破するために海の竜神に必死で祈りを捧げ腰の金作りの太刀を海に投げ込むとみるみる潮が引き鎌倉攻めを成し遂げたとなっている。
稲村ケ崎碑が建ち景色がよく現在は史跡公園になっている。
夕刻になると江の島が影絵のようにみえる落日の美しさは夜景の灯と相まって誠に結構である。
森典生「江の島と大波」アクリル F10
Commentaires