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小石浩治

話の花籠 ---足遣い ---

文楽「曾根崎心中」(近松門左衛門作)を見た。

あらすじ (2月東京公演:国立劇場小劇場)

 大阪の醤油屋平野屋の手代徳兵衛は色茶屋天満屋の遊女お初の馴染み客でありかつ相思相愛の関係にあった。徳兵衛はお初をいずれ身請けし夫婦になろうとしたが、叔父(平野屋の主人)は二人の関係を知りつつも、妻の姪と祝言を上げさせ、自身の跡取りにしようとした。徳兵衛の継母に金を握らせ話を強引に進める。徳兵衛は断ると、主人は「ならば金を返せ、出来ねば大阪の地を踏ませぬ」と怒る。徳兵衛も意地になって継母から金を取り返いし、主人につき返そうとする。

●生玉社前の段(お初と失意の徳兵衛が逢う)そんな中、友人の油屋九平次に借金の無心をされたので取り返した金を貸してやったが、期日になっても返済がない。そればかりか、証文の印は以前無くした印で無効届をお上に出しており、挙句に徳兵衛を偽判使いの大罪人だと町中に吹聴する。騙された上に商人としての信頼を失った徳兵衛は、対抗するすべもなく、あてもなく街をさ迷い、いつしか天満屋の前にさしかかる。

●天満屋の段(お初が徳兵衛を裾の下に隠す)お初は徳兵衛の噂に胸を痛めるが、店の表に徳兵衛の姿を見つけ、打掛の裾にそっと隠して店に引き入れ、縁の下に隠す。そこへ九平次がやってきて徳兵衛の悪口をさんざん言うが、お初は、怒り苦悶する徳兵衛を足で抑えなだめ、徳兵衛の喉笛に足をあて、心中の決意を確かめ合う。

●天神森の段(覚悟を決めた二人は天神森へ)お初は店の者が寝静まってから徳兵衛と共に手に手を取って表に出て行く。「この世の名残、夜も名残、死にに行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜。・・・・哀れこの世の暇乞い。長き夢路を曾根崎の、森の、雫となりにけり・・」。人形浄瑠璃の主遣い、左遣い、足遣いは、三者息を揃えて劇を盛り上げる。本来、女性には足がないのだが「天満屋の段」では「足」を作る。「お初の足」が二人の苦悶と死の道行を決意する重要な役割を担うからだ。女の小さな「足」が悲劇を表現する構図は世界にあっただろうか。

 ちなみに絵画の世界で思い出す「女の足」は、

①マネの「草上の昼食(水浴)」だ。裸婦の足が紳士の会話の中に遠慮なく割って入る。発表当時、ナポレオン三世は「不謹慎だ」と言ったとか。

次に、②ロートレックの「フレンチカンカン」変わり種は、

③福田繁雄の「トリックアート」いずれも悲劇とは反対に陽気で楽しい「足遣い」である。やっぱり、楽しい「足」の方が良いね。

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