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福林紀之

~風と光を感じながら~

本文は北大東京同窓会会報「フロンテイァ」2017/No51 から転載させていただきました)  山岳部に入るつもりで北大まで来たのに海から見た残雪の暑寒別や積丹半島の山々があまりにも美しいので、ヨット部に入ってしまった。爾来、50年以上ヨット遊びを続けている。仲間たちとクルーザーを作って、レースやクルージングでさんざん遊んだ。沖縄や小笠原まで出かけたこともある。 我が艇“ジュンブライドⅣ世”のホームポートは油壷。三浦半島の先端にある。複雑に入り組んだ小さな入り江である。

スケッチ「油壷」水彩・F6

どんな大風が吹いても湾内は油を流したように静穏である。油壷とは見事な名前を付けたものである。湾を囲む緑が海面に映え、四季それぞれに美しい。  そんな静かな入り江であるから、ここには早くからヨットが繋留され、日本のクルージングヨットのメッカとなっている。伊豆七島は手軽にクルージングに出かける場所である。伊豆大島の波浮は行きや帰りに必ず寄る島である。波浮湾はもともとは火口であったところ。 江戸時代開梱して入り江となった。入口が狭いので外界の荒波を防ぎ、時化の時でも中は静かである。

港の一角は魚の荷揚げ場。その裏に店屋と民家が連なっている。かっては相当の漁獲があり、湾内を漁船が埋め尽くしたそうだが、それも遠い昔のはなし。300人もの女性がいる大きな遊郭もあったらしいが、今では寂しく道行く人も少ない。  湾を見下ろす小高いところに“伊豆の踊子”の泊まった“みなとや旅館”があるが、ここも今では営業をしていない。 この島には明治の頃から文人墨客が大勢訪れた。 波浮の高台に文学散歩のコースがある。 野口雨情、中山晋平、与謝野鉄幹、晶子、大町桂月、林芙美子、などの歌碑がある。 離島というどこか侘びしくそれでいてなぜか漂う解放感に魅かれて遊んだのであろう。 渡し船 傘をたてたるひとのせて 波浮の入り江に けぶる春雨                与謝野鉄幹

伊豆近海で時化に遭遇すると、我々もここに避難する。風待ちしながらスケッチなどしていると、それなりに時間を潰せるから不思議である。 スケッチ「波浮の集落」水彩・F3

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