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大谷敏久

カズオ・イシグロ「日の名残り」とイギリス風景

―『品格ある執事の道を追求し続けて来たスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年使えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々----,過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸の中で生きつづける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞1989受賞作』―ハヤカワ文庫から

「日の名残り(The Remains of the Day)」はノーベル文学賞2017受賞作家カズオ・イシグロの 三作品目です。この作品を読んだのは20年近く前1999年東京黒百合38回展の頃でした。  現役時代にイギリスを訪れたのは50年以上前からですが、その都度の機会に出来るだけ英国の歴史、風俗風土、水彩史等を知るようにテーマを決めていました。その中に「英国の執事とはどんな職業か」がありました。  社会人になって「人を使う、人に使われる」ことの大切さと難しさを両親、先輩、上司から厳しく教えられ、大切にしていましたので、詳しく知りたいものと何時も頭の隅にありました。そんな時OBになってからですが、全く偶然に英国在住の知人から推薦されたのが「The Remains of the Day」でした。

 ペーパーバックス(余り聞かなくなったのも時代の流れです)を探して、たどたどしく読みながら「執事とは」を随分と詳しく面白く知ることが出来ました。物語の面白さもさることながら、主人公が短い旅に出る中で自分の執事生活を振り返るのですが、旅先に出てくる「風景の描写」がとても美しく巧く、イギリス風景の特徴をよく表現しているのに気がつきました。

 私が描き廻った時、いつも心に思っていたのと全く同じようだと感じたのです。日本人らしい感覚なのでしょうか、四季の移り変わりを感じさせながら、山並みの重畳表現、黄昏の寂寥表現、海辺の夕日に沈みいく描写など文章と絵が重なるのです。物語はイングランド南西部ソールズベリー平原、連る丘陵地帯で展開するのですが、私の幾度も描き廻った地域だったのです。日本の山岳風景の地形はありません、穏やかな丘陵がつづきます。ソールズベリーの街、大聖堂、ストーンヘンジなどの観光名所があり、少し北がコッツウオルズ、バース、北東はオックスフォードにつながります。沢山の想い出の作品を見て頂きたいと思い、その一部をご紹介します。   余談ですが「日の名残り」の映画撮影舞台になったのが、これまた偶然で、コッツウオルズのDyrham Park (17世紀館庭園110ha・新宿御苑58.3ha)で、娘宅に居候の折り一緒しました。 英国ナショナルトラストになっていて、自然環境から館内の調度品までそのまま良く保存管理されています。

バッキンガム

牧場1

花・ラベンダー

静寂・女性修道院

運河・閘門

運河・泊地

館・Dyrham Park

廃 墟

花・水仙

牧 場2

引き潮・Dover

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