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清水全生

私のモチーフ

 私は、主に油絵の風景画を描いている。学生時代も同じでそれは今も変わらない。当時は好きな画家に梅原龍三郎がいた。彼の大胆で独特な色彩とタッチは自分の目標とする絵だと思っていた。  卒業後は絵と全く関係ない生活をしていたが、15年程前の現役時代に北海道知事の待合室で、偶然に、三岸節子の「摩周湖の絵」を見て感動したことがある。湖を中心に大きく、背後の山は小さく、手前に数本の木を配置したシンプルな構図だが、湖の緑色が強烈で印象に残る絵だった。  その時、私は50数年前に自分が描いた絵も同じく「湖の絵」だったことを思い出した。それは、美術部黒百合の劣等生が唯一展覧会に出品した絵である。同時に、札幌丸井デパートで会場の入り口近くに未熟な新入生の作品らしく飾られ、訪ねてくれた彼女に、恥ずかしい思いをした記憶も蘇った。  その後、この絵は室蘭の実家に永く眠っていたが、同じく絵を描く姉も処分に困り、数年前に私の手元に戻って来た。50数年前の稚拙で、恥ずかしい思いが一杯に詰まった絵だが、今回ここに掲載する。このことはかなり躊躇したが勇気を出した。  ついでに恥の上乗りに近いが見方によっては、どこか三岸節子の絵のようにシンプルな構成で、梅原龍三郎に似た大胆なタッチの絵と思えなくもない。これが私の風景画の出席点である。

写真1 学生時代黒百合展に出品(50数年前の作品)

 現在は、毎年春と秋の一泊写生会で訪れる山、川、湖、漁港、海岸線の景色等を取材し、一年中楽しんでいる。現地でのスケッチと写真を頼りにして、新品のキャンバスは木炭で、旧作を塗りつぶしたキャンバスでは筆、クレパス等を用いデッサンしている。この構図決めの時が一番楽しく、絵の良し悪しはこの時点で決まる。デッサンは目にした物の形状、色彩、その陰影を含めて入念に時間を掛けている。  何を中心に描くか、画面上に沢山はいらない、印象に残るものは何か、等だけを考えて居れば良いと分かっているがいつもそう出来ない。自分の性格か技術者の矜持からか、細かいことへの拘りを捨てられないのが課題である。合評会でも、諸先輩からいつも指摘されている。50数年前の風景画の出発点に戻り、シンプルに考え直したいと思っている。

写真2 約30年前、景色の良い山梨都留市に住んだ頃、良く釣りに行った鹿留川の渓流

写真3 春の一泊写生会(越後湯沢) 魚野川

写真4 秋の一泊写生会(稲取漁港) 南伊豆

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