奥野嘉雄
モチーフと言えば、風景や静物等だけでなく、光や色(特に赤色)それ自体もモチーフとなって描かれることが多いのでは。例えば、クロード・モネの「印象日の出」やフンセント・ゴッホの「黄色い家」ではキラキラした光が、また、鴨井玲の「道化師」や三岸節子の「花」では鮮やかな赤色が主要なモチーフとなって見る人に大きなインパクトを与えてくれる。私もこれらの絵の光彩や赤色が大好きで何時も画集を眺めている。
私は数年来自宅近くの手賀沼風景を描いてきたが、一方では赤色が主題となる風景にもトライしたいと考えていた。その思いにフイットしたのが浅草寺の大提灯である。赤を強く意識して描いた拙画を作品1,2に紹介する。
作品1は「浅草寺本堂」の本尊を守るように張り出した大提灯を、また、図2は「雷門」を風水から守るように吊るされた大提灯を描いたものである。些かでも赤色の迫力が表現できたらと思っている。
作品1 浅草寺本堂(P20)
浅草寺の大提灯は昔からよく描かれており、江戸時代の歌川広重「浅草金龍山」や笠松紫波「浅草観音大提灯」(何れも版画)、更には木村荘八「浅草寺の春」(油絵)が有名である。
当寺の大提灯は、本堂(観音堂)や雷門に加え、本堂と雷門との間にある宝蔵門(仁王門)にもあり、各々に個性がある。
大提灯は何れの寺であれ、お堂や門の空間を3次元的に表現する個体であるだけでなく、周囲にオーラを発する力強さを感じさせてくれる。特に赤色の提灯は見る人に強い印象を残す。これからも迫力ある各地の赤提灯が描けたらと思っている。
参考までに、浅草寺の3つの大提灯の寸法を示すが、その大きさに驚く。
本堂(H4.5mxW3.5m)、
雷門(H3.9mxW3.3m)、
宝蔵門(H3.75mxW2.7m)
作品2 浅草寺雷門(F20)
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