(4/6~6/23 パナソニック汐留美術館) 19世紀半ば、明るい外光のもとで目に映る自然を捉えることをめざした印象派が台頭した時代。そんな中で一人背をむけて文学や伝説の世界に耽溺した画家・ギュスターヴ・モロー(1826-1898)展が新橋のパナソニック・汐留美術館で開催されている。展示構成順にみると--- 1.モローが愛した女たち 世界で一番大切な存在であったという母、結婚しなかったものの30年近くモローに寄り添った恋人の死がそうさせたのか、72年の生涯を独身で通した。 2、作品「出現」(1876年頃)とサロメ 新約聖書で王妃ヘロデヤにそそのかされ、踊りの褒美としてヘロデ王に聖ヨハネの首をねだったサロメの物語を描いたもの。眼前に出現したヨハネの首の幻影と対峙する場面。 モローは下絵や習作に度々取上げている。 3.宿命の女たち 本展のテーマ[Femme fatale=ファム・ファタル=運命の女]として、ギリシャ神話のヘレネ(トロイア戦争を招いた悪女)、メッサリーナ(ローマ皇帝の妻=夜の顔をもつ)等。 4.純潔の乙女(下図;「一角獣」1885年頃) 伝説の動物“一角獣”。人間にはなじまないが、純潔な処女には無抵抗で飼いならされる。 性格は獰猛、角は強靭で毒を中和する力がある。誇り高く、生け捕りされそうになると、断崖から飛び降りて死ぬという。画面は、悪とは無縁な存在の純潔の女性の筈だが、なんと妖艶な“乙女”たちだろう。