映画「新渡戸の夢」の試写会を参観して
牧野尊敏
昨年6月に当会の小品展会場でも撮影が行われ、かねて話題になった
ドキュメンタル映画「新渡戸の夢」が完成し試写会がありましたので参観しました。
その感想を記します。この試写会には関係者40名ほど参加し、約90分の映画でした。
映画制作は順調に進みその後は若干の編集を経て8月~9月頃公開されるとのことです。
この映画の主題は新渡戸稲造が開校した「札幌遠友夜学校」についてのものでした。
主にこの学校に関わる関係者のインタビューを介して親の時代当時の夜学校に通って
いた人を思い出しての話等、新渡戸稲造の教育理念を紹介する映画でまとめられて
いました。その教育理念は「教育や学問によって人格を修養し、高尚なものにする
ことこそが目標で、誰とでも男女年齢を問わず貧しい人であっても相応に談話ができ、
欲や利益に左右されない人間を形成すること」を目的としています。
その学校は「学問のための学問でなく、人生を生き抜く実践のための学問でなくては
ならない」として「学問より実行」という新渡戸の言葉を理念に掲げています。
この学校は戦時中に閉校しましたが、1990年に新渡戸の意思を継ぐ形で
「札幌遠友塾自主夜間中学」が設立されました。映画はその学校の教育の様子を
紹介しておりました。この新渡戸の教育理念は、武士道やクラーク精神を意識させ、
今の教育事情や政治事情等の世相に反映されるべきものかと感じました。
本会からは細井さんが本人の描いた絵を背景に、展覧会会場の様子と相まって
インタビュー出演されていました。本会が新渡戸の教育精神を受け継ぎ活動している
団体の位置づけで、映画の最後の字幕に本会の名が明記されていました。
この映画は新渡戸の痕跡を見直すきっかけになるよい映画と思いました。
この紙面ではすべてを紹介できませんので、この映画が公開されたときに
DVDを介して会員の皆様に改めて紹介できる機会があればと思っております。
注:上写真「新渡戸稲造記念像」は、かって「遠友夜学校」の入り口に建てられたもの。 働く青年が、新渡戸夫妻の肖像レリーフに刻まれた花輪をもって立つというブロンズ像。
一時、有島武郎も教師を務めた。台座に「学問より実行」と刻まれている。(注記・小石)
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