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執筆者の写真東京黒百合会

寄 稿

一色通三作「竹の寺・地蔵院」アクリル F10  

講評:大川心平氏(上野の森美術館講師)


 この作品には二つの要素があるように感じます。

 一つは寺院の静けさを明暗表現を使って描いている点、二つ目は竹林に代表される明暗に

あまり重点を置かない平面的(模様的)表現です。

 どちらの方向性で制作を進めたとしても、良い作品は生まれるでしょう。

 先ずはご自身に問いかけ、目指す方向を認識することが必要です。

 質問にあるどこに注意して描けば入賞することが出来たかということですが、ポイントと

なるのは、思い切りの良さです。明暗表現を使った写実的な作品を目指すのであれば、風景のトリミング(切り取り方)に意外性が欲しいです。この構図のままだと、どんなに写実的に描けたとしても、平凡な印象を審査員に与えてしまうことが想像できます。

 例えば参道の木漏れ日が画面の大きな面積を占めたり(図A)

竹林の直線的な要素が主役となる画面もあり得るかもしれません(図B)。

 竹林の描写などをみると、一色さんがとても丁寧にこの作品と向き合っていることが

伝わってきます。これは個性の一つですので、竹林以外の場所、例えば葉なども丁寧に

色彩やタッチに変化をつけると更に魅力が出ます。

 同じ緑でも、ビリジャン、カドミュームグリーン、サップグリーン、オリーブグリーン等、様々な絵の具があります。混色すれば更にたくさんの緑を作ることが出来ます。

(主に黄+青、黄+緑、青+緑)

また、タッチの変化は、筆の大きさ、形状、スピード、筆圧に差をつけることで表現できる

ので、ぜひ研究をして下さい。

 今後、思い切りのよい詩情溢れる作品が描けることを期待しております。




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