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執筆者の写真東京黒百合会

院 展

再興第105回(2021・2/6~3/14 於;横浜・そごう)  小石浩治

 日本美術院は岡倉天心を中心に、大観、春草、観山らが加わり、1898 (明治31)

に創立された。その後、美術院の研究所は五浦に移るが天心の没後、上野の谷中

に再興、「芸術の自由研究を主とす。教師なし先輩あり、教習なし研究所あり」と高らかに宣言した。

 今第105回は、同人作家の作品及び神奈川県出身・在住作家の作品など計84点を一堂集めたものである。


図①内閣総理大臣賞・「神々の視座」井出康人作


 通常の展覧会は、作品の意図、作者の想いを綴る事が少ないが、今回・入賞作

の作品について、作者の制作動機などが横に記載あり鑑賞の救けになった。

 図①の場合は、<全能の神、サンヒャンウイデイを描いた。「虚無の神、サンヒ

ャンウイデイは、色、形はなく、又、限りない存在だった。語り合う仲間もいないので、神々を創造したいと思った」。

 図②上;「大樹・五色八重咲散椿図」大矢 紀作 


 世界を創造した最高神としてロンタル(聖典)に位置付けられている。バリの人々は神について、空気のようなもの、居るのは解るし感じることも出来るが見ることが出来ないと話す。Bali はサンスクリット語で貢物、神々への供え物・・を意味する>と。―――

 バリ島(インドネシア)と言えばケチャ(舞踊劇)が有名だ。昔、疫病が蔓延した時、童女を媒体にして祖先の霊を招き加護と助言を求めたという。作者はそれを意識して中央に若い女性を配し、後景に男女を配したに違いない。現在はインドの叙事詩を元に男性の舞踊劇に変っている。

 我等の会展の“50字コメント”に比べると上の説明はかなり長いが、このような記述がなければ構図や人物の存在意味が解らないまま、展示作品の前を通り過ぎてしまう所だ。

 又、図②「五色八重咲散椿図」は入選作ではないが、「絵画の自由研究」精神がそのまま現れているように思えたので制作動機を見ると、作者・大矢 紀氏は <川崎市小学校内にある「街の樹50選」の樹である。ルーツは加藤清正が朝鮮から持ち帰って豊臣秀吉に献上したもの。京都地蔵院が本家。樹齢500余年。一度描いてみたかった。>と解説。

 一見、金屏風に日本画の絵具・顔料をふんだんに使い、自由に色遊びしたものと思ったが、帰宅後、調べたらなるほど、季節になれば華やかな色彩を放つ銘木と知った。

(写真・川崎市千代ヶ丘小学校の椿)


六曲一隻の大画面を埋めるには、現実と想像の調和、加えて作者の情熱と、何よりも 絵を楽しむ気持ちが重要なのだ。      

 

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