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執筆者の写真東京黒百合会

安野光雅展

小石浩治 記


 9/15~10/4 横浜高島屋8F  ――洛中洛外と京都御苑の花 ――

 安野光雅(1926-2020、94歳歿)氏は、島根県津和野町に生れ、昭15年山口県宇部工業高入学、のち応召し復員後、山口師範学校(現・山口大教育学部)を出て昭和24年,美術教員として上京、三鷹小学校や武蔵野小学校等の教師を務める傍ら、玉川学園或いは明星学園では教育テキストの装幀等を手掛ける。35歳で教師を辞し、絵描きとして自立する。昭和43年、絵本「ふしぎなえ」(福音館書店)で絵本作家として世に出る。その後、次第に世界的評価が高まり、絵本は世界各国で翻訳された。司馬遼太郎の紀行文集「街道を行く」の装画を担当、他に著述家としても活躍した。美術のみならず、科学、数学、文学にも造詣が深く、豊かな知識と創造力で独創性あふれる作品を発表。著書に絵本平家物語、ABCの絵本、旅の絵本等多数。紫綬褒章、文化功労章受章。

 昔、買い求めた安野絵本の一つに“だまし絵”のことが書いてあった。



「(上図)部分的に見ればどこと言っておかしくはない、しかし、部分から部分へと順に辿って全体の構造がどうなっているのか理解しようとすれば、たちまち頭がこんがらがってくる。

―中略―この現象の秘密は、私達の目がもともと奥行きのない二次元の絵の世界に、普段見慣れている三次元の日常生界の遠近感を持ち込んでみようとすることから起こるもので、

私たちの知覚の盲点を巧妙に暴き出してくれるゲームでもある」・“全体を見れば間違っている”(「安野光雅の画集」・講談社刊)

 この絵を見れば、日本だけでなく世界各国で多くの賞を受け、世界に多くのファンを持つというのもうなずける。

 こんな面白い絵を描く安野氏が約9年に亘り京都を描いた作品95点と京都御苑の花を描いた作品25点の原画(産経新聞連載)を紹介する展覧会が、横浜高島屋ギャラリーで開催された。

 全点水彩画であるが、現場でF10号クラスの画用紙を膝に置き、心静かに対象を見つめ、現場の空気を感じ取って、気負わず、素直に優しく絵具を置いた・・・という印象が強い。

鉛筆の跡も殆ど無く、よくこんなにバランスよく描けるものと感心した。

中でも「空也上人立像」は写真かと思うほどの描写力に、しばらく見とれて立ち去り難かった。

 以下に筆者の気に入った作品の数点を並べてみたい。


「 東 寺 」   (今回展のチラシを飾る)


「嵐山法輪寺」


「瀧の千年桜」


 「京丹後の稲刈り」


「祇園花見小路」


「大原女」


       「六波羅蜜寺・空也上人立像」

※ 空也上人が「南無阿弥陀仏」を唱えるとその一言一言(南・無・阿・弥・陀・仏)が阿弥陀仏になったという伝説を彫刻化している。(運慶の四男・康勝の作)

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