二紀展出展 笠原玲子作「ルブレサックの館」油彩画(奨励賞)を参観しての感想
牧野尊敏
笠原玲子さん(会員・笠原寛氏夫人)が、今年も二紀展に出品され奨励賞を受賞されたのでその感想を記します。奨励賞おめでとうございました。笠原さんの油彩画の大作というと婦人像のイメージであるが、今回の作品は建物の絵でした。黄色とオレンジ色を基調にされた絵の構成は変わりませんでしたが、いつもと異なる絵の構成でしたので新鮮味を感じた。黄色で統一された空、道、建物、背景の中に浮かび上がる古城と思われる館が半抽象化されて表現され、建物が立体的で道があることにより館へ案内される構成であり全体的に存在感があると感じた。また、全体に明るい雰囲気で絵の右側に木を添えているのが絵にバランスを与えていて安定感をもたらしていると思った。
9月のふるさと展に出品された「巡礼の町・コンク」の絵もオレンジ色を基調にして古城を表現されていたので、同じ構図を意識しての作品と思われた。笠原さんの作品は、対象物を分解しその対象物に背景と同じ色の配色を施し抽象化しているのが特徴と思われる。
今回拝見した絵は館の存在感を強く感じ受賞に値する絵と感じた。
笠原さんの絵について勝手な解釈をして恐縮でしたが、二紀展は全般に半抽象画が多く、具象的な対象をもとにモチーフを変形、編集させた表現の絵が中心の展覧会と思う。展示された各々の絵は作者の個性が強く表現されているが、作品を見る人によってその見方はそれぞれと思われる。作者の意図に反し全く異なる見方をする場合もあるかもしれない。笠原さんはどのような意図で描かれたのか、絵を見ただけではさすがにその内面までの理解はできなかった。
音楽も同じで、曲名や曲を聞いただけで聞く側の感性が作曲者の意図に合っているかどうか、やはりまちまちではないかと思う。具象画の場合は、絵を一瞬見ると周囲の見慣れた光景に合うので、その比較で鑑賞しがちである。具象画であっても作者はそれなりの意図を秘めているはずである。参観者は作者の内面まで理解して鑑賞しているか否か、作者はその意図をその作画表現のみで参観者に伝えるのは容易ではない。
結局どのような絵であっても絵の評価は参観者の感性で決まってしまうのか、笠原さんの絵と周りの絵を見てしみじみ感じた。
笠原玲子作「ルブレサックの館」 ※(ルブレサック=フランス中南部の美しい村)
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