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執筆者の写真東京黒百合会

“日本の自然を描く”展:講評

・一色通三作「紀元杉」について ・

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9/11~30上野の森美術館で開催された上記展に、一色さんは展覧会のテーマ「日本の自然」を愛する一画人として屋久島を代表する樹齢3000年の老樹「紀元杉」を描きましたが、残念ながら冠賞は獲得出来ませんでした。

一色さんは「紀元杉の生命力と合わせ持つ不気味な姿に魅せられて描いたのだが、どこに注意すれば入賞できたか」と選者に問い合わせたところ、丁寧に選評(文書講評)が送れられてきました。

一色さんのご厚意により、その全文を本誌に掲載させて頂きました。(小石記)

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講評:大見伸氏(1951年愛知県生まれ、立軌会同人、上野の森アートスクール講)  

樹齢3000年の屋久杉とはすばらしいモチーフですね。一色さんの描きたかったこの屋久杉の「生命力」と「不気味な姿」をテーマに解説していきたいと思います。

とその前に、私が感じた作品の印象ですが、「屋久杉の周りを黄緑の葉の木々が囲んで、

その黄緑色がとても爽やかに描かれている」・・・・と言う事です。

確かに作品としては生命力を感じるところではありますが、それは屋久杉ではなく、周りの木々から来る印象なのです。屋久杉も丹念に描かれてはいますが、周りの黄緑に押されて、

あまり迫力を感じません。やはりここは主役(テーマである)屋久杉の雄大さを表現するために、周りをどう表現すべきかを考えなければなりません。

では、この屋久杉の生命力を不気味な姿はどう描けばいいのでしょうか。

作品の印象を決めるのは第一が色彩。そしてその主題(テーマ)を決定づける為の構図と

画面構成が必要となります。色彩的には先に述べたように、屋久杉の迫力を出すために、

周りの木々の色を、全体的にもう少し暗めにし、作品としての違和感を無くすことだと思います。

それと、作品としての印象が爽やか過ぎて、そこに不気味な姿は全く感じられません。

この不気味さが今回の作品のテーマでなくては、「紀元杉」と言う作品にならないのでは

ないかと思います。

この作品には、テーマの邪魔になるもの(A,B,C)があります。これは省略すべきだと思います。またDは、屋久杉の足元を切ってしまう構図になっています。

屋久杉の足元をしっかり描くことで、樹としての迫力が出てくるのではと思います。

今後の健闘を期待しています。  



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