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執筆者の写真東京黒百合会

私のモチーフ

                                       

空を見ながら、つれづれに・・・

                               桑山雅子


 会報の封を開け原稿依頼を見た時、丁度、珈琲を飲みながら空を眺めていました。コロナ禍で気持ちも塞ぎがちですが、コロナをひととき忘れるために思い出を辿ってみようと思いました。

 私が東京黒百合会に参加させていただいたのは、父を亡くし母を引き取った矢先の頃でした。

 父を亡くしたばかりでしたので、東京黒百合会に父の世代の先輩がおられたことがとても嬉しかったです。最初の展覧会でお声かけをさせて頂いたのが 故)大谷先生でした。大谷先生が水彩でイギリスの風景画を描かれていたことがきっかけでした。と言いますのも私は、三十代に夫の仕事で四年間ロンドンに住んでおりましたので、大谷先生の絵に懐かしさを感じたためでした。


 イギリスは高い山がないため、雲が走っていました。空と雲の雰囲気が独特で、高速道路を運転しながら前方を見て「ターナーの絵と同じ空だ」とよく思っていました。そのイギリスの雲が大谷先生の水彩画にも上手に描かれていたので、大谷先生に「イギリスの雲がお上手ですね」と申し上げたら「そうですか、それはよく分からないけどなぁ」と笑っておられました。イギリス話に花が咲き、そのあとメールでご自身のイギリスの風景画をたくさん送って下さいました。 先生の風景画は、イギリスの空気感や空が見事に描かれていたと思います。

 

 若い頃、画集を観るのが好きでよく観ていたのですが、ターナーの絵の雲が他の画家と比べて独特だと感じていました。ターナーの国、イギリスに住んで驚いたのがやはりその雲でした。

 イギリスは一日に四季があると言われていて暑いと思ったら急に雨が降って寒くなって、すぐ止んで日が差して清々しくなったりと天気が一日でくるくる変わる風土でしたので、イギリスの空はいろんな雲がすごいスピードで走っていたのです。       

 ロンドンに住んでターナーの描いた雲の独特さを実感して、「私は今、ターナーの国に住んでいるのだわ」と思ったものでした。


 大谷先生はイギリスの風景を好まれ、最後まで絵を愛されて本当にお手本のようなお年の召され方でした。絵を描かれる諸先輩もまたお元気に活躍されておられ、絵を描くことの素晴らしさを改めて感じております。

 自粛もあり、家でゆっくり昔の懐かしい時間を巻き戻し、今回は、イギリスの雲、ターナーの雲、そして大谷先生の描かれた雲に思いを馳せてみました。



ターナー「ドルバダーン城」1800年


ターナー「雨、蒸気、速度」1844年


編集注:w・ターナー (1775-1851)・英

    光と色彩と空気を描く、近代絵画に先駆けたイギリス風景画の巨匠。

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