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  • 執筆者の写真東京黒百合会

私のモチーフ

                            初谷長治

 今、私の最もお気に入りのモチーフと言えば、それは風景画で街を画くことです。        

よく画く題目は過去に旅行、出張などの機会に歩いた風景であって、それらを当時写真に

したためておいたものを掘り出してイメージを働かせてそれらをカンバスに載せています。

例えば写真①のように、近景は見下ろし視野で、中景に水平線を含む主題があって、

遠景の延長された街景色を空が青く見える等々が「お気に入り」と思えるモチーフです。

先日の60回展東京黒百合展へ出品した私の「ドイツ・バイエルンの田舎の街」がこれらの

4作品目・写真②です。今は5作品目をデッサン中です。うまくいけば、この5作品目を

来年6月の小品展に飾りたいところです。



                          

 画歴の浅い私は東京黒百合会に4~5年前に入会し、油絵をはじめました。正確に言うと

大学生時代に油絵を少々手掛け4~5枚描いた記憶がありますが、社会人になってからは時間的余裕もなく遠ざかってしまいました。しかし、それでも美術は好きですのでいろいろな展覧会出かけて見に行っておりました。特に秋の「二科展」は毎年出かけていました。

 最近は逆に見逃すことも多々あります。此の美術好きによって会員の清水さん(北大同期生)に誘われて入会した次第です。一方で自分の絵の未熟さはよくわかっていたので、在住の宇都宮市内に画塾を見つけて、ここ数年、毎月2回ほど通っています。

 画家の指導も緩やかで、東京黒百合会のポリシー同様、大らかに絵を描かせてくれて、

アドバイスを頂いて油絵を画いています。また多少何かに関心が生じると美術書などを探したりして楽しんでいます。そんなわけで油絵については大変良い趣味を見つけたと思っております。

 今後もコツコツと積み重ねていければと考えています。


 主題のモチーフについて面白いなと思った話題を一つ紹介します。

 丁度20年程前に出張でベトナムのホーチミン市(旧サイゴン)を訪問した時、市内の

アクセサリーショップのお店で、見掛け気に入って手にしたものがありました(写真③)。

10ミリ程の暑さの板上に漆の様なもので画かれた縦300mm,横200mmの変わった絵でした。

欧州絵画調でもなければ、まして日本調とは遠い代物で、値段もそれほど高くはなかったのですぐ購入し旅の土産としました。後年インターネットで美術品コーナーを見ていたところ、似たものの画面が出てきました。創作者名は現在では中国画家第一人者「丁紹光テインシャオカン」で、作品名は「イルミネーション」でした。写真③の土産物は無名の画家が稼ぎのために模造品を作って売っていたものと想像できます。

 このイルミネーションを私自身で模造したものが写真④です。

話はそれで終わらず、コロナ流行の前年にフランスのパリを訪れて、セーヌ川の畔を散策し

ていたところ、屋外の露店で100年前(1920~1922)プリントされたポスターを沢山、安価に売っていました。


③ 丁紹光作


④ 初谷作


 そこで見つけたポスターが写真⑤です。


 これは現代に持ってきてもそのまま通用するようなモチーフと図柄なのです。

この写真③と写真⑤の共通点は、

    1.両手で盆を捧げている。

    2.その盆の側面に画かれている模様の絵が魚であること。

    3.画いた女性がスリムな美人であること。

異なっている点

    1.イルミネーションの方は他人のポーズに祈りの雰囲気があり、いくらか宗教性が見える点。

    2.写真⑤は日本で言う漫画風で、外形を線で画いたものに色を加えている。                    

 全体に100年前の作品とは思えない新しさを感じるものでした。

しかし、両者を見比べてみると、そのモチーフにある類似性に驚かざるを得ない。

もちろん年代的には写真⑤は1922年作で、イルミネーションの方は1970年以降と考えると、丁紹光の頭の中にどこか別に見た絵の残像として自然に出てきて画かれたのかも知れません。

しかし偶然にしては、盆のサイドにある魚の図まで一致してくることが本当にあるだろうか。と考えてしまいました。

 後日に宇都宮市の絵の塾のインストラクターの画家にこの話をしてみたところ、彼は絵の作品の世界では「モチーフのパクリ、部分的パクリは日常茶飯事で全く問題にならないヨ」

と笑い飛ばされてしまいました。

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