(8月12~16日/上野の森美術館) 写真と文:小石浩治
「日本の自然を描く展」は、四季を通じて、日本の自然の美を再発見し再認識する展覧会。東京の後、仙台展、西日本展と移動展示する。
主催は日本美術協会、上野の森美術館など後援は文化庁、東京都、各テレビ会社、協賛はJR東日本
一色さんの作品「父島の公園」(下図)は、東京都・小笠原諸島の父島を訪ねた時の風景。父島は東京都本土の竹芝ふ頭から航路で約24時間かかると言う。小笠原諸島はユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録されている。
この度、全国3892点の応募のうち2363点が入賞入選となった。一色さんは惜しくも「賞」を逃したが、父島を訪ねた時の感激が、素直に伝わってくる。草木の葉の描き方はどこかアンリ・ルソーの画「夢」に似て、木の陰の様子から南国の風を感じる。丁寧に描いている。
入賞作品(上位賞)の多くは、庶民の生活環境やよく見かける巷の風景を主題としていた。
その一つ、上野の森美術館賞「雲と糸の風景」①図は、ごく普通の街角から空を見上げた瞬間を描いたものである。作者・山本幸希氏曰く
「――私はクレヨンで描いています。電線を張りめぐらされた空を見上げてクモの巣みたいだなあ・・とそのままの絵です。―自分にとって絵と言うのは、紙の上に落ちたインクの染みの様なもので、たまたまできた偶然の産物と言った部分も大きく、たとえどんなにシンプルであっても同じものは二度と描けません。
――描いている瞬間瞬間のライブ・パフォーマンスなのです。・・」 ―以下略―
(上野の森美術館・友の会通信/2019/夏号から)
町や山村の暮らしも「日本の自然であり景色である」が、通念として持っている「日本の豊かな自然」は一体何処へ行ったのだろうかと考えながら会場を後にした。
下図① 上野の森美術館賞「雲と糸の風景」
作・山本幸希氏
下図② 彫刻の森美術館賞「赤い絨毯にのっ
て」 作・山本百合子氏
下図③ 東京都知事賞「ガンバルマンの夕」
作・田代美津子氏
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