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執筆者の写真東京黒百合会

第6回小品展を終えて

長谷川 脩

 2024年度の小品展は最初から波乱含みだった。会員数が減少したうえに、様々な理由で辞退する方が多く、最終的に出展者20名、作品数42点となった。総会員数の6割にも満たない状態である。しかし、出展いただいた作品を会場に飾ってみると、それぞれの個性が輝き、これまでと何ら遜色ない華やいだ空気に包まれた。

 写真の出展が出来るようになり、尾中氏に入会してもらった。彼は多くの写真を撮っていて、町田の版画美術館で個展を何回も開いている。その時の作品群があまりに豊かな内容だったので、それに近いものを出してもらえないか、と常々思っていた。今回の作品3点は、個展の内容に近いもので、今後もそれらを出展することを期待したい。


「大木・さ~下るぞ!!」 マダガスカル マヘリアラ村 写真 A3


後藤氏も画材を使わないデジタルアートとして、これまで以上に複雑な作品を出していた。


「崩壊と再生」 デジタルアート A3


 線と面、色彩の多重化、文字や画像の取り込みと多彩な作業がPC上で行われる様子は、想像しても全く手がかりが掴めない。しかし、キャプションの題名「崩壊と再生」「離散と集合」「隠された側面」を見ると少しは理解できた。1点だけの黒百合展とは異なり複数点が揃うことで、作品個性の違い、多様性がはっきり分かり楽しい。

 楽しいと言えば、阿部氏が「そうだ、旅に出よう」という作品を出していた。外側をバンドで止めた昔風のカバンからは、直ぐにでも旅に出るような雰囲気が伝わってくる。もう1点の「出雲国神魂神社」は「かもすじんじゃ」と読むとのこと。本殿は、現存する日本最古の「大社造り」で国宝。クレパスの優しいタッチが絵を引き立てていた。特にその前に男の子と女の子を配置して、絵に語りを付け加え「旅に出よう」と同じように話しかけられているようだった。


「出雲国 神魂神社」 クレパス F4


 楽しい作品はまだあった。小石氏の舟屋である。


舟屋(京都・伊根町) 水彩 F8


 こんな風景を観ながらスケッチが出来るところがあるのかと羨ましい思いで眺めた。その小石氏が今回の小品展の後で「ささやかな打ち上げ会とは言え、出品者・会員が車座になって歓談できたことが近年にない喜びでした。絵画の出来不出来が問題ではなく、会員各位の近況を楽しく語り会う・・会員の近況と日常生活、絵画の話題・・をツマミにして、マスクなしで話すことが、自分にどんなに希望を持たせてくれることか。」と感想を送ってくれた。

 今回、初日の飾り付けを終えて帰宅してから急に体調が悪くなった。翌日、医者に行けば何とかなるだろうとたかをくくっていた。ところが何と、まさかのコロナの診断。やむなくその後、会場に行くことが出来なくなってしまった。同じ幹事の細井氏はじめ多くの方々にご迷惑を掛けてしまう結果となった。初日会場に出向いたことで会員、来場者に感染させてしまったのでは、と大いに危惧したが、結果的にそのような事態に至らず、それだけが救いだった。そして「近年にない喜び」を感じていただいた事を知って、複雑な思いながらも、だだただ「楽しく語り合えていただけたのは良かった!」の感情でいっぱいになった。


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