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執筆者の写真東京黒百合会

谷 岑夫さんを悼む

2023.11.26 Sun.

 季節外れの暑い日が続いた後、突然谷さんの訃報が届いた。

10月には高齢者施設に移住された話を聞いた矢先のことだった。別れはいつも唐突に訪れるが、あまりにも突然のことで驚いてしまった。谷さんとの交流はグループ展に始まる。現在の小品展になる前、有志がいくつかのグループ(北斗、北香、北迪)を作り活動していて、2016年、会場の都合からグループ合同での開催となった。その時、北斗展の代表であった谷さんの出品作品が下の30号の「昼下がりのレストラン・Ver2」という題名だった。

 「昼下がりのレストラン・Ver2」 油彩 F30 

 これは、4年前に描いた同名の絵に手を加えたものだ。前作(北斗展での出品)には多くの来場者から様々な講評が寄せられ、びっくりするほど良い評価と逆の評価があり、その感想や意見を参考に大々的に修正しVer2として描いたものだった。ご本人は「昼下がりのレストラン」の名を借りて「“9月の北イタリアの光と影”を表現したかったのです。が、さて今回は?」とワンポイントコメントに書いている。それを読んで、彼が来場者の講評に耳を傾け描き方にすぐに取り入れる度量に感心させられた。北斗展の運営では緻密な計画を立て、会場予約、日程、費用、資料等全てお任せで安心してついていくだけだった。しかし、その後、体調を崩し出展が難しくなり作品を拝見することは無かった。電話で話した時には、お元気そうな声で「今はちょっと無理だけど来年あたりには描きたい」と気持ちを伝えてくれた。その後、3年に及ぶコロナ禍を経て、第59回東京黒百合展は作品集のみの発刊となった。そこに谷さんは「海鳥の島・天売島」油彩、F20を載せていた。「故郷の北海道は、隅々まで旅して行き残した天売・焼尻を訪れた」とあり、元気になられたとばかり思っていた。国内のみならず海外にも多くの旅の経験があり、描きたかったモチーフはまだまだ豊富にあったのでは…、と残念でならない。

 心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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