見果てぬ夢を追い求めて
東京黒百合会 細井 眞澄
(昭・49工・土木)
私は心の中の風景をキャンバスの上に描き出し、それを心象風景として仕立て上げております。そして自分の人生を振り返りながら、その風景と対話しております。
ここにある2つの絵もそんな私の心象風景の絵です。「北の大地」は東日本大震災の後に描いた絵です。日本で一番朝日が早く昇るのは北海道であり、厳しい冬の寒さに耐えながら、雪が降り積もった北の大地の原野を切り開き、もくもくと唯、ひたすら道産子が日本を引きずり、リードしている姿を疑似絵として象徴的に描いたものです。 雪原は津波の様子を表現、「道産子」は「大志を抱く」北海道で育まれた我々であり、そのフロンティの精神を持ち、道を切り開く姿を熱い気持ちを込めて描きました。 この絵は北大工学部の同窓会室に飾ってありますので興味のある方は是非ご覧ください。
もう1つの絵の「追憶」は子供の頃からの大の鉄道ファンでして、子犬の様に汽車や列車を追い求め、当時最後までSLが走っていた北海道にあこがれて群馬県から海を渡り、やって来てしまいました。その子犬も高齢犬になってしまった姿を追憶しています。特にそのSLのたくましさが発揮されるのは、空がきれいに晴れ渡った厳冬の季節です。よく函館本線の山奥にまで、カメラと三脚を抱えて、C62の重連で走る蒸気機関車の写真を撮りに出かけました。遠くの方から徐々に、音が大きくなって来て、山をアエギ、アエギ、モクモクと真っ白な煙を上げながら、雪の積もった坂道を駆け登って来るSLの迫力に感動し、その姿に魅了されました。機関士さんが時々、サービスで汽笛を鳴らしてくれました。その音が廻りの山々にコダマして、荘厳な交響楽を奏でます。大自然のライブ会場で、たった一人で、聞いている様な至福の一時でした。その姿が遠景に描いているC62の重連の急行「ニセコ」です。こちらに向かってくる列車は函館から釧路まで走っていたキハ82系の特急「大空」。丹頂鶴とエゾ鹿が通過する列車を出迎えてくれます。そんな思いを込め、全ての事を育んでくれた北海道への感謝の気持を込めて描きました。凍てつく厳冬の北の大地にも雪解けは必ずやって来ます。昨今の2年にも及ぶコロナの大寒波も皆様へのワクチン接種が行き渡り、今まで通りの、穏やかな日常が戻って来る事を心より祈念申し上げます。毎年、年に2回程度、北海道と北大の香りも漂う東京黒百合会展をやっております。心をリフレッシュしたい方は是非共、会展に足をお運び下さい。
「北の大地」油彩 F20 号
「追憶」油彩 F20 号
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